はじめに
発達障がいは、決して育て方により生じたものではありません。
しかしながら誤解や周囲の理解不足などから、保護者の方が子どもの気になる行動を自分の責任と感じ、自信を失ってしまう、抑うつ的になってしまうといった困難を抱えてしまうこともあります。
保護者が抱えがちな困難の例
◆ 周囲から非難されることで自信を喪失する
◆ 育てにくさを感じる中で抑うつ的になる
◆ 周囲の不理解から相談する気を失ってしまう
◆ 子どもに必要以上に厳しく接してしまう
困ったことや悩み事があれば、私たちにすぐに相談してください。
家庭の役割
家庭は一種のオアシスであり、リラックスできる場です。
ましてや、母親は、子どもたち(障がいがある、ないに関係なく)にとって、安全度の高い安全基地的存在(基本的信頼感)でなければなりません。
その家庭が、最も緊張する場であったり、ストレスの場であってはいけません。
親は子どもに愛情を注ぎ子育てに熱心になるあまり、障がいに対しての専門的な知識を身につけ、それを子どもに強要しがちな場合があります。
専門家の代わりは何人もいますが、母親の代理はだれにもできないのです。
お父様へのお願い
発達に障がいを持つ子どものいる家族には、いくつかの試練があります。
その試練に、直接向かい合うのは母親であることが多いのですが、試練を乗り越えるためには、父親の理解、協力がどうしても必要です。
最初の試練は、自分の子どもが、何らかの障がいを持っていることがわかった時です。
その時の家族(特に母親)の精神的ショックは想像を絶するものがあります。とても子育てを楽しむどころでありません。
己れを責めたり、運命をのろったり、周囲に気を遣い、先を案じて子どもに手をかけてしまうことさえあります。
しかし、この時期における父親は、母親の苦悩に気が付いていないことが多く、母親のストレスはたまる一方です。
ですから、母と子をおおらかに包みこみ、感情的な反応に溺れないように支えてあげ、現実から逃避しない姿勢を見せてあげてください。
そうすることで、母親の精神的ストレスは軽減でき、良循環的な母子相互作用が確保でき、子どもの成長・発達によい影響を与えられます。
次の試練は、障がいをもった子どもをわが子として、しっかり育てていこうという決意をして、育てはじめた頃に襲ってきます。しかし、どのように育てていいのか、わからないで悩み、苦しむ期間が長く続くのです。
特に、核家族化が進んだ現代社会においては、ますます母親にかかる負担はたいへんなものです。
このような状況下で、「子育てはお前にまかす」といった態度をとる父親が多く、母親が子育てに苦しんでいても、無関心を装うことが多いのです。
母親ほど直接的に子育てには参加できなくても、父親が母親の一番のよき理解者になってあげてください。
とにかく、子育てに前向きに取り組む母親になってもらうように、物理的・心理的な諸条件を整えることが父親の最大の役割です。
障がいをもった子どもが、順調に成長・発達するか、しないかは、父親しだいといっても過言ではありません。
プラス思考を
「できないから、叱る、諦める」というマイナス思考から、「できないから、工夫する、誉める」というプラス思考に、発想の転換をしていく必要があります。実際、このような発想の転換をして関わっていくと、「できること」の多いことに驚かされるものです。その結果、「叱ること」が減り、「誉めること」が多くなるという、良循環的な関わりに変化していくものなのです。
やはり、人間は「叱られる」より「誉められる」ほうが、やる気が起こります。「誉める」ためには、その子を取り巻く大人たちが、常にプラス思考をしていないと、誉められるものではありません。とにかく、マイナス思考をやめて、スモールステップを大事にし、プラス思考を日々の生活のなかに取り入れていってください。
私たちからのお願い
障害児と関わりをもつ大人たち(親たちを含む)がやらなければならないことは、その子がもっている能力を最大限に引き出すことです(能力の顕在化)。
そのための一番重要な役割をもっているのが家庭です。
安全度の高い安全基地としての役割を、家庭が担わなければなりません。
家庭がオアシスであり、家庭という土台がしっかりしてこそ、専門機関および学校との、緊密な連携が取れ始め、安らぎの場であれば、障がい児の成長・発達を充分に促すことができると確信しています。